景観日和
ルイ・ヴィトンの箸入れ
2007-04-16
中国が割り箸の輸出を制限するという事で、消費される割り箸の9割(2006年6月時点)を中国からの輸入に頼っている日本では今後何らかの対応が迫られているという.先ず考えられるのが、コンビニや弁当屋では割り箸の有料化、飲食店では塗り箸等の再使用可能なものの採用などが挙げられる.そして次に考えられるのがマイ箸である.
就職して直ぐの頃、毎日が仕事だけになってしまうのが嫌で英会話教室に通っていた.高校時代の夏休みにも同じ教室に通っていたのだが、そこはクイーンズ・イングリッシュを教える事を売りにしていて、教師はほとんどがイギリス人であった.アメリカン・イングリッシュではなくクイーンズ・イングリッシュを選んだのは、私の父親が「英語はクイーンズ・イングリッシュが本物」と言っていた事に影響されたためである.今になって考えてみるとどちらが本物などということはなかったので、別の教室でも良かったのかもしれないが、20年経った今でも、その時のクラスメート達と交流があるので、結果として良い選択だったのであろう.そこの教室では教師と生徒のコミュニケーションを積極的に図るために定期的にパーティーを開いたり、レッスンの後で食事に行ったりしていたので、生徒同士も親しくなれたのである.そこで個人的に私のクラスの担当だったアンソニーという教師と親しくなり、レッスン後にクラスで食事に行かない日にも彼と食事をして帰るようになった.初めて一緒に食事をした時に、彼は鞄の中からマイ箸を取り出して使っていたので、そのことを話題にすると、「森を守るため」と理由を語ってくれた.その時は、割り箸は間伐材の有効利用だからマイ箸が森を守る事にはならないのではと思いながらも、「間伐材」が英語で思い付かなかったために、頷くだけで話を流してしまった.そのうち、クラスメートから彼が○○だから気を付けた方が良いと言われて、残念ながらレッスン後に彼と食事することはやめてしまった.
おそらく、20年前は今ほどコンビニや弁当屋が多くなかったので、割り箸の消費量も間伐材で賄えるものであったのだと思う.それが、一人世帯の増加や夫婦共働きが増える等の生活スタイルの変化によって、弁当の需要が大きく伸びたり、飲食店では洗う手間を減らすために塗りの箸から割り箸へと変更する事等により、割り箸の需要は国内の間伐材で賄いない程に増加するとともに、コストを下げるために割り箸の生産地が中国に移っていたのである.しかし、私自身ついて言えば、間伐材を有効利用していると思い込んでいたため、問題意識が希薄なまま割り箸を使い続けていた.思い込みとは怖いもので、河川のデザインという観点からは水源地の森林保全や、そこでの林業の問題について関心を持って見ていたものの、それが割り箸とは結びついていなかった.
写真-1 ファミリーレストランのジョナサンが2006年末から始めたエコ箸
これからは、間伐材を有効利用して日本の林業を復活し水源地の森林を保全していくという方向に行くであろうが、それは容易い事ではなく,当然時間もかかるので、それが実現するまで少なくとも飲食店においてはマイ箸を使う事が普通になるというようにすべきであろう.ところが、馴染みのカフェでこの話題が出た時に、実際問題として客に箸を持参して貰う事は極めて難しいことと認識しているという.確かに、これまで付いて来るのが当たり前だった物が無くなるだけではなく、それを自ら持って来て、使い終わったら持ち帰って洗わなくてはならないのであるから、どれだけの客が認識を改められるかと言うと、あまり期待できそうにない.さらに商売であるから、競合する他店が割り箸を使い続ければ、よほど他の部分で店に魅力があるか、客側の環境意識が強くなければ、「マイ箸」システムは成り立たない.
カフェでの結論は、ルイ・ヴィトンやシャネルが箸ケースをカタログに加えてくれれば、それを持ち歩く事が「カッコイイ」ということになり、急速に広まるのではないかという事であった.ルイ・ヴィトンにはiPod用のケースもあるくらいだから、箸ケースがあっても良いと思う.